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2020年5月3日 憲法記念日 京都からのアピール

 いま世界は、新型コロナウイルスの感染拡大という、人類史的ともいえる危機と向き合っています。
私たちは、毎年5月3日に、円山野外音楽堂に集い、「5・3憲法集会in京都」を開催してきました。しかし今年は、私たち自身がこの感染症を拡大させてはならない、そして医療をはじめ、あらゆる形でこの感染症と闘っている人たちと連帯する立場から、円山での集会を中止することにしました。しかし、今年ほど日本国憲法の価値を考え、訴えなければならない憲法記念日はありません。
 危機に直面して、この国の政治は脆(もろ)さをさらしています。場当たり的な対応とピント外れの発信をつづける安倍政権は、混乱を極めています。その原因は、平時から憲法や手続を軽視してきたこと、国民の暮らしに寄り添ってこなかったことにあるでしょう。これまでことあるごとに分断を煽(あお)ってきた首相に、「闘いを乗り切るためには、国民との一体感が大切だ」と呼びかけられても、空しく響くだけです。「森友問題」に見られるように、「官邸主導」で忖度(そんたく)を蔓延(まんえん)させたこの政権に、優れた官僚や専門家の知見を総動員する力量も器もありません。いま、日本は極めて不幸な状況です。
 ですが、私たちは黙っているわけにはいきません。人と会うことができなくとも、あらゆる手段で意見を交わし、考え、声をあげていきましょう。困難な状況にあるいま、私たちの指針となるのは、日本国憲法ではないでしょうか。日本国憲法は13条で、まず一人ひとりの生命の価値を謳っています。25条では「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。仮に自粛(じしゅく)が求められても、21条によって表現することは止められません。学校が休校になっても、26条が保障する教育を受ける権利により、適切な措置を求めることができるのです。いまこそ、もっと憲法を暮らしに生かそうではありませんか。
 みなさん、このように誰もが生きることに懸命になっているにもかかわらず、安倍政権は改憲を目論(もくろ)んでいます。「非常事態」を口実に、緊急事態条項導入の改憲論議を進めようとしています。9条改憲の野望も捨てていません。現在の人びとの苦痛や苦闘を思う良心すらないのでしょうか。
 改憲発議など、もってのほかです。今回のウイルス問題の渦中(かちゅう)にあって、政治に何が求められているのか、見えてきました。それは、軍事力の強化ではありません。一人ひとりが自分らしく生きていけるよう、サポートすることです。医療や福祉、教育を充実すべきです。「軍事によらない平和」を希求する憲法9条を変えるべきではなく、生かすべきです。
今年1月から、新たに「安倍9条改憲NO!改憲発議に反対する全国緊急署名」運動が全国で取り組まれています。私たちも、この署名運動に参加していきます。この共同の取り組みを広げ、憲法を生かし、いのちとくらし、そして平和を大切にする「まともな政治」をつくろう、と働きかけていく決意です。ともに力を尽くしましょう。

2020年5月3日  5・3憲法集会実行委員会