⇒ PDF版ダウンロード 最近の改憲をめぐる動き(2)

(1)民主党の前原誠司政調会長
〝自衛隊の武器使用基準緩和や武器輸出三原則の見直し〟発言

(アメリカ・ワシントンでの日米同盟に関するシンポジウム(9/7)での講演における発言)

*政府提出法案の事前了承など、政府の政策決定権を握る位置に格上げされた民主党政調会責任者の発言は、政府の政策を方向付ける意味を持つだけに重大。

◇前原氏の講演要旨(朝日新聞9/9付朝刊)

  • 《国連平和維持活動(PKO)と武器使用緩和》
    国連平和協力活動は、米国の手の回らないパズルのピースを日本や他の友好国が埋めていくことだ。だが、法的側面の課題を解決する必要がある。まず、自衛隊とともに行動する他国軍隊を急迫不正の侵害から防衛できるようにすることだ。日本の場合、これを自衛権や武力行使の一体化の問題にしてしまうのでおかしな議論になっている。
  • 《武器輸出三原則》
    見直すべきだ。三原則により、日本の防衛産業は民間レベルの先行的な共同技術開発などへの参画すらできない。見直しにより、国際的な技術革新の流れから取り残されるリスクの回避や装備品高騰への対応も可能になる。武器の共同開発・生産は日米同盟や米国以外の国々との安全保障協力の深化にもつながる。
  • 《日米同盟》
    東日本大震災で日米同盟は十分なほどに機能した。今後は、自然災害から武力攻撃事態まで円滑に共同して対処できるよう、指揮系統、調整、情報共有のあり方などについての準備と検証が必要だ。

◇前原発言にかかわって

  • 《石破茂自民党政調会長 9/8》
    方向性としては極めて正しい。前原氏の考えが法案化され国会に提出され、自民党案と並行して審議がおこなわれ、両党が歩み寄った形での法案成立が望ましい。
  • 《藤村修官房長官 9/8》
    前原氏の従来の持論だ。現時点で具体的な検討の進め方について(政府・民主党の)方針が決まっているわけではない。政調会長は機関(の長)であり、個人ではない。(3原則見なおしは)党としてきちっと機関の中で検討されることだ。
  • 《一川保夫防衛相 9/8》
    (政府側と)何も連携は取れていない。直接前原さんから聞いたこともない。党全体の意見として取りまとめられるか、それすらわからない。

◇前原氏の防衛に関する主な発言(朝日新聞9/9付朝刊)

  • 《2005年12月 民主党代表としてアメリカでの講演》
    主権・権益を守るため集団的自衛権行使と認定される活動について改憲を認める方向で検討を。
  • 《2010年9月 外相として外務省での就任会見》
    日米同盟関係をさらに強化し、日本安保の基盤を確立した上で経済活動をしっかり行えるような状況をつくり出していく。
  • 《2011年9月 民主党政調会長としてアメリカでの講演》
    PKO活動で自衛隊とともに活動する他国軍隊を急迫不正の侵害から防衛できるようにする必要がある。武器輸出三原則は見直す。

(2)参議院代表質問(9/15)より

  • 《中曽根弘文/自民党》
    首相は著書で自身を「新憲法制定論者」と述べ、9条、プライバシー、知る権利、地方自治など議論すべき点をあげている。改憲を本気でめざすのならともに議論をつくしたい。
  • 《首相》
    改憲には持論があり、拙著にも書いた。しかし首相として現行憲法の下で最善をつくす決意だ。震災復興、原発事故収束をはじめ喫緊の課題が山積するなか、野田内閣としては改憲が優先課題とは考えていない。
憲法9条京都の会 事務局