2021年憲法記念日に向けて、憲法9条京都の会アピール

今年の憲法記念日も、コロナの感染拡大の防止、何よりもいのちを守るため、円山音楽堂での集会を断念し、オンライン集会に切り換えることにしました。多くの人たちと直に集い、気持ちを一つにできないのは、断腸の思いです。
コロナ感染が生じてから1年以上がたつというのに、この有様です。
いま、この国は未曾有の危機に直面しています。それは、コロナ禍というだけではありません。コロナに対処すべき政治や行政が有効に機能せず、その脆さと矛盾を露わにしているのです。30年以上にわたる新自由主義政策によって、保健・医療態勢は極めて脆弱なものになりました。ですが菅政権は、さらなる病床削減を進めようとしています。経済格差は広がり、生きること自体が困難な人を生み出しています。憲法25条の定める人々の「健康に生きる権利」を国が保障していないのです。

菅首相は昨秋、日本学術会議推薦会員の任命を拒否しました。このような法を無視した強権政治が、官僚に忖度を強い専門的な能力を発揮させないばかりか、与党政治家・官僚と業者との癒着を生み、政治を歪めています。NHK改革など菅政権の「看板政策」を進める総務省が、首相の長男を介して業者とつながっていたなど、その象徴的な事件です。官僚も法律案作成で誤りを繰り返し、コロナ下で大人数宴会を深夜まで行っていたなど、信じがたい事実が報じられています。
また、この誰もが大変なときに、改憲派議員は改憲論議を進めようと憲法改正手続法の改定に躍起になり、連休明けにも強行してくるかもしれません。この国は、本当に国民のための政治を行っているのでしょうか。根本から考えなければなりません。
今国会でデジタル関連法が審議されています。人々の権利であるプライバシーが経済活動にて利活用されるという問題に加え、首相をトップとするデジタル庁があらゆるデジタル情報を一元的に管理・統制できるという大問題を抱えています。さらなる強権政治に道を開きかねません。
菅政権は、昨年末にスタンドオフ・ミサイルと称して実質的に敵基地攻撃能力の保有へと歩みだしました。また、4月16日の日米首脳会談の共同声明では、日米同盟を「インド太平洋地域、そして世界全体」のものと位置づけて「新たにする」とし、対中国を念頭に日本は「自らの防衛力を強化することを決意した」と発表しました。日本がますます米軍の「前線基地化」しはしないでしょうか。2015年に「安保関連法」が制定されているだけに、米中間で軍事衝突が起こると、日本もその当事者になるのです。憲法9条を持つ日本は、軍事衝突を起こさせない役割を担うべきであって、日本が参戦するなど絶対にあってはなりません。

安倍・菅政権の憲法無視の政治は、人々を不幸にしています。4月25日の三つの国政選挙で自民党が敗れたのは、それへの有権者の回答でしょう。いまこそ、政治的立場を超えて憲法に基づくあたりまえの政治を求めようではありませんか。政権の意向とは異なり、草の根からはジェンダー平等を求める声や、核兵器禁止条約の批准を求める声が沸き起こっています。これらはまさに、「個人の尊重」と「軍事によらない平和」を理念とする日本国憲法に沿った動きでしょう。5月3日には憲法記念日を迎えます。またここ数ヵ月内に必ず衆議院選挙が行われます。これを機に、私たちは「このままの政治でよいのか」と問いかけるとともに、日本国憲法について学び直す運動を大々的に展開しようと思います。安倍・菅政権の改憲の根を断ち、一人ひとりのいのちと暮らしを本気になって守る、まともな政治の実現に向け、全力をあげて奮闘しましょう。
2021年4月26日 憲法9条京都の会

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